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最高裁判所第一小法廷 昭和41年(あ)1531号 判決 1969年2月27日

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人海野普吉、同大竹武七郎、同松山一忠、同土屋豊、同坂上寿夫の上告趣意一、二、三は、いずれも単なる法令違反の主張であり(なお、検察官が、本件における訴因として裁判所の審判を求めている過失の内容は、牛乳に混和使用する第二燐酸ソーダの注文にあたっては、局方品、試薬などの成分規格の明らかなものを指定するか、仕入経路等を調査し、分析表を添付させるなどして、人体に有害な粗悪品の入荷を防止しなければならないのに、なんらこれらの措置をとらず、漫然と、第二燐酸ソーダとのみ言って含有物質の種類、分量等の明確でない工業用薬品を注文したこと、および右注文によって入荷された薬品は成分規格が明確にされていないから、これに人体に有害な物が含まれていないか否かについて、厳密な化学検査をしなければならないのに、それをすることなく、そのまま牛乳に混和使用したことを中核とするものであって、このことは、第一、二審を通じて変わりのないところであり、原判決には審判の請求を受けない事件について判決をした違法はない。)、同四、五は、単なる法令違反、事実誤認の主張であり、同六のうち、判例違反をいう点は、引用の判例が、フグの食用による中毒死の予見可能性に関するもので、これと事案を異にする本件には適切でなく、その余は、単なる法令違反、事実誤認の主張であり、同七、八、九は、いずれも単なる法令違反、事実誤認の主張であり、同一〇は、単なる法令違反の主張であって、すべて上告適法の理由にあたらない。

弁護人海野普吉の上告趣意第一、第二点は、いずれも単なる法令違反、事実誤認の主張であり、同第三点は、事実誤認の主張であって、すべて上告適法の理由にあたらない。

弁護人土屋豊の上告趣意第一点のうち、判例違反をいう点は、原判決は、死傷の結果の発生について予見可能性が不要だと判示しているのではなく、ドライミルク製造の過程で、砒素含有率〇・〇三%以上の第二燐酸ソーダを所定割合で原乳に添加すれば死傷の結果が当然発生する関係にある本件において、単に第二燐酸ソーダという注文によっては、右砒素含有率の高い薬品がまぎれ込む危険の予見可能性があることを判示したものであって、所論引用の判例に相反する判断をしているわけではないから、理由がなく、その余は、単なる法令違反、事実誤認の主張であり、同第二点のうち、判例違反をいう点は、原判決は、薬品についても、標示されたところと内容物とが異なる場合があることや、注文した物と異なる物が売られるおそれがあることを明らかにするために、参考として所論の判例を引用しているに過ぎないもので、なんらこれと相反する判断をしたものではなく、その余は、事実誤認の主張であり、同第三、第四点は、いずれも単なる法令違反、事実誤認の主張であって、すべて上告適法の理由にあたらない。

弁護人坂上寿夫の上告趣意第一、第三、第四点は、いずれも単なる法令違反、事実誤認の主張であり、同第二点は、単なる法令違反の主張であって、すべて上告適法の理由にあたらない。

よって、刑訴法四〇八条により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 松田二郎 裁判官 入江俊郎 裁判官 岩田 誠 裁判官 大隅健一郎)

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